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杉村 忠敬氏(杉村歯科医院)
「咬合平面設定に関する一考察」

  顎顔面バイオメカニクス学会は多方面の分野から顎顔面の機能を検討することを目的として、 平成5年に設立された。多方面の分野から検討する、ということで、設立当初は獣医師、 美容関係者をはじめ他の分野に籍を置く方々などが多数おられたが、現在では歯学部と 工学部に籍を置く会員がほとんどであることに不満を感じている。

  まあ、それはさておき、 私は歯科の領域から本学会に貢献していると自負している。私の仕事は、1)無麻酔の家兎に 固形飼料を咀嚼させたときの筋電図(両側12筋)を測定し、咀嚼筋群の相関性を検討すること。 2)全身麻酔下で両側の咬筋を電気刺激して咬合様の運動をさせたときのサル頭蓋各骨および各頸椎のひずみから、 頭蓋における咬合力の分布状況を分析すると同時に、ひずんだ頭蓋を頸椎が支えているメカニズムを検討すること、 である。

  そして、私の研究の究極の目的は、これらの実験の結果から、ヒトにとって理想的な咬合平面はどのように設定されるべきかを明らかにすることである。 長年にわたるこれらの実験から、私は、第二頸椎の歯突起中央部と後頭骨の下縁を通る平面上に咬合 平面は設定されるべきである、との結論を得ている(図参照)。実際に臨床でそのように咬合平面を 設定すると、患者さんは異口同音に「楽になった、軽く感じる」と言われる。

  そして、それまで悩んでおられた各種の症状、たとえば、偏頭痛、めまい、耳鳴り、顔面の違和感、 顎関節症、後頭部の痛み、頸部や腰部および膝部の疼痛、肩こり、むち打ちの不快さ、および、 腕の痛みやしびれなどの症状がほとんど消滅するか、かなり軽減されることを経験している。 そして、さらに最近では、リュウマチ性多発筋痛症やナルコレプシー(ねむり病)のような 歯科とはほとんど関係がないと思われるような症例でも、筋のバランスをとることにより 骨の配列を調整することにより、症状のかなりの改善が認められている。

  私は、実験で得た咬合平面の設定法が何故これらの諸症例を緩和するのかについて、 すでに論文として公表しているし、また、毎年開催される顎顔面バイオメカニクス学会において発表している。 もし、私の提唱する咬合平面設定法に興味のある方は、是非、本学会で討議し、より良い医療が提供できるように研修しようではありませんか。(2012/06)